それ、僕が図解します。

世の中のビジネスモデルやいろんなものの複雑な仕組みを、できるだけわかりやすく説明してみたいと思います。主な話題はネットビジネス、不動産、オタクネタ、時事ネタなど。中途半端な説明や、図を使ってないものもあるかもしれませんが、温かい気持ちでお許しください。

なぜKDDIのSyn.は「中心がないポータル」なのか?

 スマートフォンの世界で、GoogleAppleの支配の外で自由にビジネスをすることは難しいです。この2社から解放された自由なプラットフォームを作ることができれば、それは革命的なことであり、「スマホシフト」時代を勝ち抜くことができるでしょう。昨今のニュースアプリ、無料通話アプリ、フリマアプリ、ゲームアプリなどが繰り広げている熾烈な争いは、すべて、この「GoogleAppleから自由なプラットフォームを創りだしたところが勝ち」、というシンプルなルールで競っています。

 

 LINEを例にとって説明しましょう。中核に、圧倒的なMAUを誇るLINEアプリあります。最近はLINEニュースも中核アプリになりつつあるでしょう。その周辺にゲームやコマース、アバター、といった、コンテンツやサービスが並び、マネタイズエンジンとなっています。

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 同じことはヤフーにも言えます。ヤフーの場合、ブラウザでの検索と、ヤフーニュースが中核。周辺にはやはり数々のアプリがあります。それらを連携しているのヤフーIDとTポイントですね。ヤフー陣営はゲームへの動きが遅いように見えます。

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 楽天市場も同じです。楽天市場の場合、やはりブラウザの楽天市場が中核。その周りに「楽天経済圏」を支える数々のサービスがあるという構造です。

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 Greeはゲームセントリックです。当初ブラウザゲームで握った覇権を活用した戦略をとっていましたが、いまは周辺を増やすことに注力しています。本命はSmartNewsですね。これが将来中核に取って代わるかもしれません。周辺も増えるでしょう。「ラブホテルを始めたり辞めたりして、迷走している」と言っている人には本質が見えてないです。

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 DeNAは、Commが中核になり得たかもしれませんが、どうも難しそう。そこでキュレーションメディアの立ち上げに急速に舵を切っていますね。

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 ゲーム陣営ではセガが中心となったNoahPassというアライアンスがあります。

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 ゲームでは、コロプラが目指しているのも同じ世界観です。外周側の「Kuma the Bear」シリーズでコツコツ集客して、中央の刈り取り系アプリに流す、という勝ちパターンをいち早く作り上げました。最近は、またちょっと違った戦略のようですが。

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 こうやって見ていくと、「圧倒的な集客力を誇る中核アプリ」+「ユーザを回遊させるアプリ」という衛星構造が目指す形であると言えます。

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  ただ、これを発想して、絵に描くのは誰でもできることですが、様々な利害を調整しながら実行に移していくには猛烈な努力、馬力が必要な大変な仕事です。

 

 さて、10月16日、KDDIスマートフォンのビジネスプラットフォームであるSyn. Allianceを発表しました。12社、13コンテンツが集まり、月間のユニークユーザ数は4,000万人になるといいます。(かぶりあり)

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 今回のSyn.Allianceは「中心のないポータル」、ということです。実際のコンテンツを見てみると、確かに、中心に来るものはなさそうです。

 

 本当は中心に来るのは、資本関係のあるGunosyが望ましいと思います。しかし、今回ローンチパートナーにその名前はありませんでした。Gunosyもアドネットワークをやろうとしており、その部分がSyn.の構想とバッティングするためかもしれません。

 

 auが持っているもう一つの武器、それは「au Wallet」です。破壊的に使い勝手のいいこの電子マネーは、毎日の生活に密着しており、アライアンスの中核となるには十分な実力があると思います。しかし、今回、これを軸にする、というわけでもなさそうです。 実は、au Walletを共通軸に持ってこれない理由が有るのです。

 

 AppStoreで販売されるアプリは、アプリ内でのAppleを通さない課金や、共通ポイントなどの保有が認められません。仮にau Walletのポイントで遊べるゲームを作ったとしても、それは審査で落とされてしまうのです。クリアするためには、ユーザに七面倒な操作を要求するようなインターフェースにせざるを得ません。

 

 スマートフォン上で儲けるには、極論すると3つの方法に集約されます。『1.音楽やゲームなどデジタルコンテンツの販売』『2.コマースや予約などのトランザクション』『3.広告』。ここで、 1.はGoogleAppleに首根っこを抑えられている以上、目指すのは2や3です。これを効果的に回していくために、「共通ポイント・決済機能」はぜひとも欲しい機能だったに違いありません。しかし、そこにはAppleによる制約が掛けられており、「共通ポイント・決済機能」を使ってのプラットフォームづくりの道は事実上、閉ざされているのです。

 

 これが、海外で展開しようとしているものなら、思い切ってAppleは切ってしまう、という選択肢もとり得ました。しかし、iPhone人気の高い日本でその戦略を取るのは難しいでしょう。

 

 

 Syn. Allianceがスマホの覇権争いに勝てる方法は2つあると思います。ひとつは、Gunosyに代わるような強烈なMAUを持つコンテンツ、例えばFacebookとかTwitterを引き込んでしっかりとした中心を作る。もう一つは、ネット上に星の数ほどのコンテンツをすべて巻き込んでいき、衛星系ではなく、ひとつの銀河のようにしてしまうこと。いわゆる「オープン化戦略」です。

 

 思い返せば、iモードも、「メニューリスト>公式サイト」という中核と、「勝手サイト」という無数のオープンな世界が絶妙に組み合わさって、ひとつのプラットフォームを形成していました。スマートフォンの上で、あらたなガラパゴスが出来たとしても、それが成功モデルの一つなのであれば、盗めるところはあるのではないでしょうか。

 それにしても、新しいプラットフォームを立ち上げる、というのはほんとうに大変だったと思います。

 GoogleAppleに縛られないプラットフォームを、各社がどうやって目指していくのか、注目していきたいと思います。