【2020/02/19追記】
2019年2月に、GMOグループはマイニング事業を大幅に縮小しています。
端的に言うと、うまくいかなかった、ということですね。
------------------------------------------------------------------------------
2018年6月6日、GMOグループのZ.comさんが、新しいマイニングマシンを発表しました。それがGMO miner 2です。
これは、ASICという半導体で、ビットコインをものすごく効率的に採掘できるものになります。これを電源とネットに繋いで放置しておくと、勝手にビットコインが振り込まれてくる、というものです。
今回のGMOさんのASICはかなり高い計算能力を持っており、ハッシュ関数の計算が1秒間に24テラ(24兆)回です。
現在、最もメジャーなビットコイン用ASICはAntminer S9というものです。それとの比較表を作ってみました。
このように、GMOのマイニングマシンは、計算能力が高いものの、価格も高いです。ただし、1TH/sあたりの消費電力はAntminerに比べると省エネに仕上がっていると言えます。
いくらぐらい儲かるのか?
このマシンを導入したら、いくらぐらい儲かるのか計算してみました。
計算機 → Cryptcompareのページ
電力は北陸電力の最安値レートで計算してみました。今日のレートで、月間に$153.56ドル (約17,000円)の収益があるという試算になります。1台1,999USDですから、1年で元が取れる、という計算です。
果たしてこれで合ってるでしょうか?
収益性は毎日悪くなっていく
ビットコインは、10分に1回、みんなで一斉に計算をして、一番速く計算することができた人が自動的にもらうことができます。
当然、参加する人が多くなればなるほど、自分がビットコインをもらえるチャンスは減ります。どのぐらいの人が参入しているのか?というとこんな感じ。
毎月10%以上の伸びで増えています。(下記グラフは概算です)
ビットコインは10分毎に掘れる量が一定なので、「掘る人(ハッシュパワー)が増えるほど、収益が減る」という関係性になります。
なので、採掘量は上記のグラフとは反比例するわけです。毎月のように新しい採掘機が出荷されています。ここのところ、毎月4,200PH/sの量で増えています。それを元に、10月までの採掘量とそれ以降の採掘量の減少を予測して描いてみるとこんな感じ。
こんな感じで、採掘量は一番最初がピーク。その後はどんどん収益性が悪化していき、最終的には掘れば掘るだけ赤字になってしまいます。これは、国内最安の電気料金でシミュレーションしましたが、東京電力の通常プランで運営した場合、もっと悪くなります。東京電力の通常プランの場合、2−3ヶ月ほどで赤字になり、初期費用の回収すらおぼつかない状態です。
ポイントはビットコインの価格
上記のシミュレーションは、ビットコインの掘れ高を表しています。一方、実際にはビットコインの価格は日本円に対して常に変動しています。仮に月間6%づつ上がっていくと仮定すると、日本円換算した収益高はこうなります。
最初は26,000円/月だったのが、採掘量が減るにつれどんどん下がっていくのですが、やがて逆転して、採掘量の減少よりもビットコインの値上がりが大きくなり、回収量が増えていきます。これはどういうことでしょうか?
実は、掘っているのはあくまでビットコインであって、日本円ではないので、ビットコインの資産価値の上昇を信じている人であれば、採算は十分に合うということなんです。もちろん、逆に、日本円に対してビットコインの値段が暴落する、というシナリオもあります。その場合、もちろん、大赤字です。それがビットコインのマイニング事業なんだと思います。
今回のマシンが対応しているアルゴリズムはSHA256のみ。説明会の質疑応答で『他のアルゴリズムにも対応していきたい』と意欲を示していましたが、対応する予定については詳しい発表はなし。あくまでAntminerの競合機種、という位置づけのようです。このあたりはASICだから、なのでしょうか。
GMOは『つるはしビジネス』の名手
僕は熊谷代表のことは天才経営者として尊敬しているのですが、GMOのビジネスは、僕から見ると常に『つるはしビジネス』でした。正確に言うと、つるはしビジネス以外のビジネスもやっているのですが、それらはすべて失敗しているイメージです。
つるはしビジネスとは簡単にいうとこんな感じのものです。
ゴールドラッシュのときに儲けたのは、金を掘りに来た人につるはしやジーンズを売った人、と言われています。(いまいちエビデンスに乏しい説なのですが。)
GMOはこの「儲けようとする心につけ込んで商売をする」のを非常に得意にしています。
プロバイダー、ドメイン、レンタルサーバ、ネット証券など、ネット上での金儲けにまつわることには何でもつっこみ、可能な限り上流を抑えに行くことにだけ知恵を絞ってきた会社、と言えます。
つるはしビジネスが成功するためには簡単な法則があります。
基本はこの図です。
買い手が儲かりすぎると、売り手は損をしています。
このように、買った人がみんな損するようなものだと、その商品は長続きせずビジネスとして終わってしまいます。
ちょうどいいのは、「買った人の一部が儲かるけど、みんなが儲かるわけじゃない」という状態です。
GMOはこの「一部の人が儲かるけど、それ以外の多数はあんまり儲からない道具」を売るのを得意にしているように思います。
熊谷代表は今回、マイニングビジネスに100億円の投資をしているそうです。かなり大きな投資であり、マイニングマシンの説明会に熊谷代表自身が出てきていることからも、その力の入れ具合がわかります。
ビットコインや仮想通貨に関しても同じで、それを掘ったり取引したりするよりも、掘る機械を作ったり、取引所を作ったりするのが「つるはしビジネス」になると思います。
マイニングマシンは常時業務用の掃除機みたいなすごい音がするので普通の家庭やオフィスには置けません。今後は「マイニングマシンを置くスペース貸し」みたいなビジネスも登場するかも。
さて、今回のGMOマイニングマシン。果たしてどのタイプの商品でしょうか?最初に買ったごく一部の人だけが儲かるような商品の気がするのですが、果たして。
ちなみに、第1回の購入締切は2018/6/11 18:00 です。