4月、5月と、立て続けにポイントサービス系と、スマート決済のニュースがありました。
- 楽天ポイント
楽天、共通ポイント市場に参入 11社参加で10月開始:朝日新聞デジタル -
ポンタ&リクルートポイント
- ヤフー&Tポイント
「ウルトラマン商店街」をTポイントで活性化 ー ヤフーとTポイントが商店街の活性化を狙う | Shopping Tribe
- 食べログ
僕はポイント系、スマート決済系の話は大好きで、過去に何度かブログの記事も書いているのですが、今回も誰も取材に来てくれなかったので、勝手にまとめます。
今回の発表で、各種陣営はこんな風にまとまりました。ポイント系の事業計画してる人は、この表、試験に出ますのでまるごと暗記して下さい。
一見して、楽天スーパーポイントの会員数が目立っています。楽天スーパーポイントはおそらく、重複ユーザも少ないはず。メールアドレスとのヒモ付けを考えると、普通はひとつ。ブログとかレシピに書く目的でいくつもアカウント持ってる人もいる可能性はもちろんありますが、そういうコミュニティ系のサービスでは楽天さんはそんな強くないですし。逆に、無料で発行される店舗系のポイント・カードは1人で2枚持ってたりしますよね。
さて、似たようなサービスが、なぜ林立するのか、というと、当然、みんな自分のところに囲い込みたいからです。ただ、囲い込みたい動機がそれぞれ少しづつ違います。
とにかく「楽天市場」に来てほしい楽天
楽天市場の狙いはシンプルです。9,000万人というお買い物ユーザは国内で最大規模です。Amazonとの厳しい戦いを勝ち抜くには、「ロイヤルカスタマー」を育てなければなりません。そのための強力なツールが楽天スーパーポイントであり、これで「楽天経済圏」を築くのです。
ネットで買えるものは楽天で、それ以外のものはポイントが貯まるお店で。コンビニでのお買い物や飲食を取り込み、さらに楽天経済圏を大きくしたい。そうすることで、市場の流通量が増え、本体の収益も上がる。というものです。実にシンプル。自分たちの強みを活かした戦略、といえます。一方、リアルでは、まだまだ「楽天スーパーポイントが貯まる店」というのは十分浸透しているとはいえませんから、これをどれだけのスピードで広げられるかがカギになります。
楽天・ヤフー抜きで戦うリクルートとローソン
この先、ネット無しにポイント系のサービスを強化するのは難しいでしょう。しかし、この陣営には強力なネットプレイヤーがいません。いや、リクルートのサービスはいずれも日本有数のPVを誇るので、強力なネットプレイヤーといえるかもしれませんが、楽天、ヤフーに比べると、TAC(traffic acquisition cost) の面では不利なはず。Eコマースやデジタルコンテンツなど、ユーザがネットで直接お金を落とす部分もまだ弱いです。もっともっとアクセス欲しいのです。そして、そのためのユーザデータも欲しいです。わりと貪欲です。
リクルートポイントは、車とか旅行とか金額の大きな消費をするときに貯まる、という点が他のポイントサービスと較べて有利な点です。一方、そういう消費は回数が少ないので、その会員が生きてるのか死んでるのかわかりませんでした。また、使い道も限られていました。そこにポンタと統合されるとなれば、頻度・使い道とも増えユーザメリットは上がります。
ユーザは「ポンタが貯まる店に行こう」と思っても、ローソン以外知りませんから、ホットペッパーグルメやビューティーで店を探してから訪問するという流れになります。普通、そんなめんどくさいことはしないので「前に行ったあそこだとポンタ貯まるからまた行くか」ということになります。つまり、店舗に対しては、「再来店させる力があります」というアピールをすることになります。
これからの課題は、リクルートのクライアント店舗がポンタを導入してくれるかどうか、でしょう。いまのところ飲食店では大戸屋やケンタッキー、和民さんなどがあります。Airレジの対応店が自動的に加わってくると、店舗数は増やせそうです。一方で、すでにポンタに加盟している店舗さんからすると、「再来店」が減ってしまう可能性があるので、そこの調整をどうつけてメリットを出していくのか、というあたりがハードルになりそうですね。
こう見ていくと、この陣営はやや課題が多い印象。食物連鎖がまだちゃんとつながってない感じがします。
ファミマがキモになるヤフー&Tポイント
この陣営の重要な点は「Tポイントを発行しても、ヤフーは儲からない」点にあります。Tポイントは、「100円の価値のポイントを100円以上で売る」という通貨発行のようなビジネスモデルです(前にも書いた)。楽天スーパーポイントが楽天市場で発行される時、かならず楽天の売上はあがっていますし、リクルートポイントが発行される時にはかならず何らかの形でリクルートの売上につながっています。しかし、ヤフーの売上の大半は広告収入で、Tポイントが発行されるタイミングとのつながりは少ないです。ヤフーショッピングは手数料無料で儲からないので、ウォレットで動画コンテンツ買った時、ぐらいでしょうか。
じゃあ、なぜ、ヤフーはTポイントと連携したのか、というと、リアルでのユーザとの接点を持ちたかったからではないか、と推測しています。左上に「使えるサイトに行こう」と書きましたが、実際にはこういうひとは少数です。Tポイントは歴史も長く、ユーザはどこにいったらTポイントが貯まり、使えるのかを知っています。つまり、すでにロイヤリティが高い状態です。それらのユーザの行動とネットの行動を結びつけたらどうなるか?それがおそらくヤフーの狙っているところです。
上の記事にあるような地域活性もできるでしょうし、ユーザのターゲティングもより正確になり、広告媒体の価値も高められると思います。もちろん、ユーザの課題解決、という点においても、いろいろなヒントが生まれることでしょう。
ヤフー&Tポイントが完全に生活の一部になり、無くてはならないものにすること。PCからスマホに大きくシフトした時と同じように、スマホからまた別のところにシフトする可能性は十分にあります。そのとき、リアルでの接点をしっかりと持っていれば、変化への対応も焦ること無くできるはずです。
TSUTAYAでCD/DVDを借りる人がいなくなっても、ファミマでおにぎりを買う人はいなくなりませんから、この陣営では、ファミマの存在感が更に高まるのではないか、と思っています。
いまいちはっきりしない食べログの狙い
最後に食べログです。ここはポイントはありません。今回、「食べログPay」というクレジットカード決済が導入されました。これがあれば、お店は3%という安い決済手数料だけでクレジットカード決済を導入することができます。
さて、ポイントがあるわけではないので、ユーザはシンプルにいつものように「良さそうな店舗に行きたい」と思って、食べログで検索するだけです。言ったらたまたま「食べログPay」が使えるので、それを使って支払いました。ただそれだけです。
お店の願いは常にただひとつ「もっと来店して欲しい」。それだけです。「食べログPay」を入れることによって、いままでクレジットカードが使えない、という理由で来てくれてなかったお客さんがもしかしたら増えるかもしれませんが、それで売上が3%以上伸びるかどうか?は正直わかりません。
一方、食べログ側は導入店舗が増えるとメリットが有ります。いままで、そのお店の単価はユーザの口コミに頼るしかありませんでした。しかし、これからは、時間帯別の売上や、決済単価が分かるようになります。レジ機能まではないので、リクルートのAirレジのように「どのメニューが注文されたか」「来店人数は何人か」までわかりません。(Airレジを使っている飲食店側はそういう情報が渡る可能性を意識して欲しい。)しかし、いままでわからなかったことが一つでも分かるようになることは、食べログのようにユーザへの情報提供を価値としているサイトにとっては非常に重要なことです。
しかし、それにしてはアプリの機能はちゃちぃし(決済単価はわかるけど何人でそれを食べたのかは多分わからない)、ユーザにとってのメリットもはっきりしないし、店舗にとっても、Squareやコイニー、Paypal Hereといった他のスマート決済に較べて手数料以外のメリットが良くわかりません。このあたりはネット上のサービスと連携した新しいやり方を期待したいところです。
通信キャリアはどうするんだろう
ところで、毎月数千円使うユーザを数千万人単位で持っている企業で、ポイントプログラムもやっているにもかかわらず、まだどこの陣営にも入ってない一団があります。NTTドコモ、ソフトバンク、auなどの通信キャリアです。で、auが5月21日から新しいサービスを始める模様。
au WALLET 誕生!! http://entry.wallet.auone.jp/lp/
携帯電話を使ってるだけでポイントが貯まるわけで、これをベースに日常のコンビニやスーパーでの買い物や、旅行などの大きなお買い物の時もポイントが貯まる・使えるとなると、ユーザの囲い込みとしてはかなり強力に感じます。ドコモはおさいふケータイ、EdyやiDで電子マネーの世界には近いポジションにいますし、ソフトバンクといえばヤフーと同じグループ。すべてのキャリアが「リアル店舗でもポイントが貯まる」サービスに手を出すことは時間の問題ではないかと思います。(追記:コメントもらってますが、ソフトバンクはすでにTポイントと連携を発表済みでした。)
「ドコモの契約をしてるだけで自動的に楽天スーパーポイントが貯まる!」みたいな状況になったら、囲い込みとして完璧ですし、なかなか痺れる状況ですよね。
まとめ
僕は楽天スーパーポイント、Tポイント、ポンタ、ANAマイレージ、Suica、ビックカメラ、ヨドバシカメラのそれぞれのポイントの残高がそこそこに残ってるので、どれか一つにまとめられず、割りと悩んでいます。まだしばらく、その状況は続きそうです。
まとめとしては、現状は楽天スーパーポイントが1歩リード、それを追う、ヤフーTポイントと、ポンタ。と、いう感じです。上の表にはとても書ききれませんでしたが、それぞれのポイントカードがいろんな事業者と提携して、ユーザに対する利便性をあげようとしています。どの小売事業者がどこの陣営に入っていくのか、携帯電話キャリアの動きも含めてこれからも目が離せません。