それ、僕が図解します。

世の中のビジネスモデルやいろんなものの複雑な仕組みを、できるだけわかりやすく説明してみたいと思います。主な話題はネットビジネス、不動産、オタクネタ、時事ネタなど。中途半端な説明や、図を使ってないものもあるかもしれませんが、温かい気持ちでお許しください。

緊急経済対策『現金30万円給付』の問題点

新型コロナウイルスの被害への緊急経済対策として、政府が緊急経済対策として「条件付きでの現金30万円給付」を打ち出しました。

 

これに対して、 元大蔵省官僚で経済学者の小黒一正 法政大学教授から、問題点を指摘する論考がアップされています。

http://www.kazumasaoguro.com/COVID-19-2.pdf

 

問題点がコンパクトにまとめてありますので、そのまま図解して掲載します。(小黒先生の了解済み)

給付の条件

今回の給付金を貰える条件となる世帯はこちらのとおりです。下記の条件①または条件②のいずれかを満たすと、給付の対象となります。

条件① 世帯主の月間収入(本年2月~6月の任意の月)が、新型コロナウイルス感染症発生前に比べて減少し、かつ年間ベースに引き直すと個人住民税均等割非課税水準となる低所得世帯
条件② 世帯主の月間収入(本年2月~6月の任意の月)が、新型コロナウイルス感染症発生前に比べて大幅に減少(半減以上)し、かつ年間ベースに引き直すと個人住民税均等割非課税水準の2倍以下となる世帯等

非常にわかりにくいので、整理すると下記のような感じです。

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条件①の場合はほぼ貧困世帯、条件②に当てはまる場合は月収が半減しており収入にかなりの打撃を受けている世帯と言うことになります。ここに絞って給付することのどこが問題なのでしょうか?

「世帯ごと給付」の問題

小黒先生は給付が世帯ごとになっていることが問題といいます。

 

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まず、世帯ごとなので、同じ世帯年収でも人数が少ないほうが、一人あたりの給付額はもちろん大きくなります。

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年収が400万円から220万円になった場合、4人家族なら条件①を満たしますので給付金を受け取れますが、3人家族の場合、条件①も②も満たさないので、原則として給付金は受け取れません。

このように年収の減り方が同じであっても、子どもの人数によって違いが発生します。

 

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さらに、世帯人数が同じ場合であっても、違いが生じる場合があります。

左の家庭は年収が600万から300万になりましたので条件②に当てはまるので給付の対象ですが、右の世帯は減り方が僅かに足りず給付の対象にはなりません。「世帯の人数」も「減少後の年収」も同じなのに、違いが生じています。

 

収入変動が条件になることの問題点

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今回、年金生活者や生活保護を受けている方は収入が減るわけではないので給付の対象になりません。一方で、年金の金額が低く、そのために労働して足りない生活費を補っている人は、収入の減り幅によっては給付の対象になります。

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失業手当に関して申請タイミングによっては6月までの収入が低くなり、給付金の対象になる可能性があります。申請タイミングを意図的に遅らせることで給付金がもらえるなら、失業手当を申請するのを遅らせる人が出てきそうです。

 

賃金操作の可能性

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今回「2020年2月から6月までの間に1月でも半額以下になった場合、その月を年間ベースに引き直す」となっています。このため、雇用する事業者は、2020年6月の給与のみ意図的に大幅に減らすことで、従業員を給付金の対象とすることが出来ます。7月以降元通りにすれば、給付金と差し引きでトータルの収入が増えます。このような意図的な操作が行われないとも限りません。

どういった給付方法が望ましいか?

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これらの問題点からいって、財政再建は遠のくものの、一律の給付のほうがマシである、と小黒先生は言います。

財源はどうするか?ですが、東日本大震災の時と同様の「復興債」を発行すればいいのではないかという提案です。

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東日本大震災のときは14.3兆円の復興債を発行し、その後の増税でそれを返済しています。

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仮に、ひとり10万円を配るなら、必要な財源は13兆円。東日本大震災の復興債と同規模で、決して不可能な数字では有りません。

 

「どのように一人あたり10万円配るか?」その方法についても、小黒先生の論考の最後に書かれていますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

 

まとめ

じつは、この現金給付はもう決まってしまっており、実施に向けてガンガン動いてしまっています。たとえば、こちらの記事です。

www.nikkei.com

また、小黒先生以外にも反対の意見を述べている方がいらっしゃいます。

toyokeizai.net

このように、識者の方が警鐘を鳴らしているのにどんどん進められているのが本当に悔しく、残念でなりません。

 

 

私自身も、やはりこのような給付はすべきではないと思います。一旦、成人全員なり、国民全員に配り、来年の所得税で調整する(雑収入扱いとして所得税を課税)する方法が最もシンプルだと思います。

 

それ以上に、本当に現金を配るのが一番いいのでしょうか?お金持ちのお殿様が配ってくれるわけではなく、その現金は将来、私達や私達の子供の世代がそれを支払うだけです。いわば、タコが脚を食ってるような状態です。

 

今の状況は、自粛でお金が回っていないことが問題です。この状況が1ヶ月ぐらいで終わればいいですが、あと半年、業界によっては1年続くところもあると思います。10万円〜30万円の給付であったとして、半年、1年の需要の下支えになるとは思えません。それよりは、消費税を減税するなどしたほうがいいのではないか?と私自身は考えます。

 

現金給付とともに「休業を要請するなら補償をセット」という人も多いです。しかし、それにしても、そのお金は将来私達が支払うお金です。私達が東日本大震災の復興のお金を未だに払っているのに気づいてましたか?その行き先を本当に監視できていましたか?

 

給付にしても補償にしても、矛盾のない形、シンプルな形を求めるべきだと私は思います。