「インターネット界隈のことを調べるお」さんが、ボルテージさんの決算のことについて触れていらっしゃっていました。(好決算だったボルテージ「恋愛ゲームの次の一手」|インターネット界隈の事を調べるお) これがきっかけでボルテージさんの決算資料を見ていて僕も気になったことがありましたので、まとめてみました。
ネイティブアプリ2大巨頭と比べてみる
ガンホー・オンライン・エンターテイメントさん、コロプラさんと比べてみました。実際の売上高からGoogle,Appleへ支払うプラットフォーム手数料(ボルテージさんは販売手数料)を引いた「ネット売上高」「ネット利益率」で比較します。
売り上げはガンホーさんが圧倒的ですね。
利益率はどうでしょうか。
コロプラさんと、ボルテージさん、売り上げの差に比べると、利益率に大きな開きがあるのがわかると思います。
それにしても、ガンホーさんの利益率、圧倒的です。なんと費用は20%。Google、Appleへの手数料が30%ですから、それよりも安いコストで製品を作って運営していることになります。Google,Apple取りすぎやろ。。
ソフトウェア資産も確認
制作コストの一部はソフトウェア資産に計上することがあります。これはP/Lでは把握できませんから、実際に決算を分析するときには、ソフトウェア資産の増加額や減価償却の累計額といった金額も把握する必要があります。流れを追うと大変なので、いったん、各社のソフトウェア資産の割合について。
ボルテージさんはソフトウェア資産への積み上げも大きいですね。結構社歴が長いといろいろ資産は溜まってきます。あとあと減価償却でP/Lに効いてくるので要注意です。ていうか、コロプラさん、少ないですね。資産のほとんどが現金です。この有価証券報告書提出の後、さらに公募増資で92億円調達してますから、200億以上あるはず。
利益率のガンホー、キャッシュのコロプラ。といえそうです。
時価総額と利益率の関係
一般的に、利益率は、産業が生まれた時には高く、産業が成熟していくにしたがって低くなっていきます。これはまあ、経済界のセントラルドグマみたいなものではないでしょうか。
新しい産業でさらなる成長が見込めるとなると、それだけ期待された高い株価になるはず。類似会社を時価総額と利益率でプロットしてみました。
やはり、きれいに直線状に並びました。
こうやってみると、DeNA、グリーさんもまだまだ存在感があるのがわかります。利益率が高い割に時価総額がそこまで高くないモブキャストさんは割安といえるのですかね。どうなんでしょう。
なぜ、ボルテージさんの利益率はそんなに高くないのか
さて、話をボルテージさんに戻します。他社さんに比べて、それほど利益率が上がってない理由を考えてみたいと思います。
これはボルテージさんの決算資料からです。売上原価に労務費と外注費が25億ほど乗っかっています。これ以外に、ソフトウェア資産に組み入れている部分もあるはず。ボルテージさんは売上の三分の一ほどを制作原価にかけています。逆にいうと、「作ったものを3倍の値段で売れている」ともいえます。広告宣伝費は売り上げの18%ほどですから、これも少ないとはいいませんが、適正な範囲ですね。
結局のところ、ボルテージさんは、ゲームを制作するクリエイターや社員にしっかりとお金を払って作ってもらっている会社、ということではないかなと思います。株式市場からはあんまり評価されませんが、長くヒットを作っていくには大事なことなんじゃないかと思います。
ところで、今後ですが、ボルテージさんの利益率があがる可能性はあるのでしょうか?それは疑問だと思っています。理由はこのスライド。
これから、海外向けにシフトしていく、さらに、男女やサスペンスにも増やしていく、ということのようです。しかし、ボルテージさんのアプリは文字量がめちゃくちゃ多いものばかりで、翻訳にかかるコストは相当なものになるはず。もちろん、ローカライズといっても単なる翻訳だけではすみません。背景や小物など含めると結構な作り直しが必要になってきます。と、なるとはじめから英語圏で作る、ということになると思いますが、それはそれでコストがかかるはず。大幅な利益率の改善は見込めそうにないですね。
ただし、今後大ヒット作品が生まれて、映像作品やキャラクター商品など、違う儲け方ができるようになったときには、大きく利益率が変わることが期待できます。それまではクリエイターに還元しながら長くいい作品を作る、ということなのかなと思いました。