先日、「持ち家がいいの?賃貸がいいの?」と聞かれたので、その時に答えた内容を書いてみようと思います。
答え:物件による
様々な前提条件について検証し、導き出した答えがこれでした。「いままで家賃を払ってたのがほんとにバカらしかった!」と実感するような持ち家もあれば、「なんでそんな物件を買ったの?賃貸で十分じゃない」という物件もあります。もちろん、買う人の属性によって最適な物件というのは大きく変わるのですが、結論は『物件による』これにつきます。
とはいえ、これだけでは身も蓋もないので、もうちょっと突っ込んで解説しようと思います。
一般的な「持ち家」VS「賃貸」の対立ポイント
代表的なところとしては上記のような感じでしょうか?これだけみれば「ライフスタイル」や「価値観」が大きく左右するような気がします。が、本当にそうでしょうか?
賃貸で住んではいけない物件
一言でいうと「身の丈に合わない物件」です。独身の人にとって、広すぎる物件は金食い虫です。家賃はもちろんのこと、家具やモノを買いたくなりますし、友達も呼びたくなります。いざ結婚して二人の新居を買おう!という時の頭金がそれだけ減ることになります。このあと触れますが、頭金が少ないと「買ってはいけない物件」に手を出してしまう確率が格段に高くなります。
夫婦にとっても、そうです。今の30代の人がもらえる年金は夫婦で15万円程度。そこから家賃と、生活費、その他の費用を払うと、一円も残りません。どちらかが要介護になったりしたら、一気に「下流老人」へとまっしぐらです。そうならないように資産を作る必要があります。
賃貸に住む、ということは「将来のために不動産の形で自分たちにお金を残さない」という選択をしているわけですから、不動産以外の形でしっかりお金を残さなければなりません。なにも資産運用は不動産に限ったものではありませんから。
若いころの浪費は、老後にツケを回すだけの話です。
絶対に買ってはいけない物件
土地の値段は市況によって上がり下がりします。建物価格は年数と共に下がります。つまり大抵の物件の場合、値下がりします。物件を売るときには、諸経費や税金もかかります。
一般に、年数によって売却価格は下がりますので、ローンとの関係はこうなります。
実際には、こんなふうに最初から手残りが出るパターンは少ないです。普通は、物件価格の8割から9割を借りますので、下記のようになることが多いでしょう。
購入からN年までは売らないほうがよく、売るならN年を超えてから、ということになります。多くの場合、このパターンになるのではないかと思います。
割高な物件を買うと、いつまでもローンが残る、ということが起こります。こうなってしまうと、売るに売れません。ところが、新築マンションで自己資金が少ないと、容易にこういうことになってしまうんですね。こういう物件を買ってはいけません。
本当の「住宅ローンシミュレーション」とは?
「家賃>返済額、だから、売れなければ貸せばいい。」と気軽にいう人がいます。さて、本当にそうでしょうか?
年数とともに家賃は下がります。一方、修繕積立金は普通増えます。なので、「いざとなったら貸せばいい」と軽く考えるのは危険なのですね。売るに売れず、貸すに貸せず。でもそんな時に限って、家族の都合で引っ越しを余儀なくされたら。。。それはいわゆる「詰んだ」状態ではないでしょうか。
そうならないように、買うときに「いつごろいくらで売れる。いくらで貸せる」というのをしっかりシミュレーションすることが重要です。本当の住宅ローンシミュレーション、とはそういうことです。
ちなみに、不動産屋さんのやってくれる住宅ローンシミュレーションは「あなたが詰む一歩手前のギリギリの金額」を計算してくれることです。彼らはなるべく高い物件を売りたいですからね。
絶対に買ってはいけない人
「物件による」ところは大きいのですが、一方で、手を出してはいけない人もいます。
1. お金がない人
お金が無ければ買えないのだから、当たり前じゃないか?と思うかもしれません。確かに、現実には不動産を買うためには自己資金が必要です。
新築か中古か、銀行からの借入が何割かによりますが、最低でも14%必要です。3,000万の物件で420万円です。引越し費用や家具代を抜きにしても、これぐらいは用意する必要が有ります。
ところが、自己資金が全く無くても買う人がいるんですね。どうやってるか?銀行からは限度枠まで借りているので、残りの「自己資金」分はノンバンクから借りることになります。
それでも、物件価格が十分安くて、魅力的な物件、「損益分岐点」に数年で到達するような物件なら問題ありません。しかし、そうでもない物件なら話は別です。もしノンバンクから借りて買ったことが銀行にバレたら、「期限の利益」を失い、全額をすぐに返済するように迫られます。でも、売るに売れない。担保として物件を差し出しても、ノンバンクへの借金は残ります。引っ越しもしなければなりません。「詰み」への道一直線です。
お金がない人は、とにかく自分の「身の丈にあった」物件に住むこと。そしてお金をコツコツ貯め、不動産以外の手段で運用することです。
ちなみに、偉そうなことを書いてますが、僕もマンションを買った時、お金がありませんでした。なので、当時の彼女からお金を借りました。彼女も良く貸したものだと思います。いまは妻です。感謝してます。
2. 55歳以上で自己資金が不十分な人
一般的な住宅ローンでは80歳が返済期限になるように設定されます。55歳の人は80−55=25年しか貸してくれません。
55歳で買うなら、老後の生活をそこで過ごすという前提だと思います。それまで賃貸で暮らしてきたので、老後の住む所が不安。だから会社員の身分があるうちにローンを組み、退職金で繰り上げ返済しよう、という気持ちは分かります。自己資金が十分ある場合はそれでもいいかもしれません。しかし、自己資金が不十分な場合、資産形成としては定年までの5年間というのは短すぎます。
住宅ローンの元利均等返済の場合、返済初期は利息部分が多く元本の返済は進みません。全期間で支払う利息が500万円とすると、そのうちの250万円は最初の7年半で支払う計算です。この期間が銀行にとって「おいしい客」なんですね。例えば10年目に繰り上げ返済をしても、利息の軽減効果はあまり期待できません。むしろ、返済の効率がいいので、そのまま借りておくほうがマシです。なけなしの退職金はとっておいたほうがいいです。
それよりも定年退職後に手元にまとまった資金が出来てから、引っ越しや資産運用をまとめて考えるほうがいいと思います。55歳までに住宅資産も手元資金も作れなかったのであれば、老後資金について考えるチャンスは、退職のタイミングがベストではないかと思います。それまでに中途半端に手元資金を使いきってしまって物件を買うと、却って身動きが取りにくくなるかもしれません。
「家を持つ」ということは不動産に投資する。と、いうことです。不動産投資は回収まで一定の時間がかかります。定年後夫婦二人が安心して暮らせる貯蓄額は3,000万円と言われています。自己資金のない人が不動産投資で数年でそれだけの金額を稼ぐのはかなり難しいです。時間のかかる投資なので早く始めたほうがいいのですが、一方で、タイムリミットのある投資でもあるのです。
引っ越しの問題は?
ところで、「持ち家 v.s 賃貸」で、環境の変化による引っ越しの容易さ、というのが挙げられます。これはもちろん、一理あるのですが、上に挙げたような「詰み」物件を選ばなければ、その物件を貸すことでマイナスにはならないので自分は引っ越すことができます。引っ越しは殆ど理由になりません。
また、ローンをある程度返済して「含み益」ができていれば、物件の担保余力を生かして、もう一軒買うなんてことも出来ます。もし、定年時に2軒持っていれば、1軒に自分が住み、もう一軒は貸したりAirbnbに出したりして、その収入を年金の足しにすることもできます。
誰に相談すればいいのか?
ここまで長々と書いてきましたが、実際の所、年齢、居住地、職業、持ってる資産額によって答えは異なります。なので、全く知識の無い方にとって、持ち家か、賃貸か、どんな物件がいいか、答えを出すのは容易ではありません。詳しい人に相談するのが一番ですが、じゃあ誰に相談すればいいでしょうか。
- 不動産屋:手持ちの「この人が買えそうな一番高い物件」を無理して買わされるだけです、相談するのは最後です。
- ファイナンシャルプランナー:持ち家を買う前にまず保険を薦められます。
- 税理士:ローンや保険の税金についてなら教えてくれますが。。。
- 家族・友人:不動産取引に精通してる人がいるならいいでしょう。そうでなければその人自身がした選択をおしつけられるだけです。
困ったことに、適切な相手がいません。
結局、自分のことは自分で考えるしか無い、というこれまた身も蓋もない話ということですね。ああ、身も蓋もない。
賃貸がいいか。持ち家がいいか。(東新住建)
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