得意の水泳を生かして、プールの監視員のアルバイトをしていた頃、「水上安全法救助員」の講習を受けました。座学だけではなく、5日間ひたすら泳ぐというガチな講習だった覚えがあります。
監視員といえば、「バチャバチャ溺れてる子供を見つけると、躊躇なくザブーンと飛び込んで、ビシッと救い上げ、プールサイドでオロオロするしかなかった若い母親に引き渡すと、拝むばかりに感謝され『監視員さん、よかったら今晩お食事でも。あなたのベッドに溺れたい』」なんてことはありませんでした。
そんな立場から、水の事故への対策を考えたいと思います。
ひとはバチャバチャ溺れない
溺れるというと、こういうイメージですが、実際にはこういう感じにはなりません。どうなるかというと、「スーッ」っと沈んでいくんですね。音もなく。普通に潜って遊んでいるのと、見分けがつかないこともあるぐらいです。
最初に沈む。次に、パニックになる。結果的に手足をバタバタさせたりします。もがけばもがくほど、バランスを失うのでさらに沈みます。なので、最初に「スーッ」っと沈んだのを見たら、すぐに引き上げに行きます。
溺れそうな奴も場所も決まってる
ずっと同じプールの水面見てるから、というのもありますが、溺れそうな場所というのは決まっています。僕がやっていたプールは一つのプールの途中で、大人用と子供用の2種類の深さがあるものでした。境目はフェンスで仕切られていて、簡単に行き来できないのですが、子供はそういうところで遊びたがるんですね。深さが急に変わるところは危険です。
溺れるのは「男子小学生」です。どんくさそうな男子小学生が来たら、対岸の監視員と『おい、やばそうなのがきたからそっちからも見て』とアイコンタクト。で、やっぱり「スッ」と沈みます。すかさず、プールサイドから手を伸ばしてガツッと脇を持ち上げます。本人には何が起こったのかわからないうちに、すべてが終わってます。
もし、それが本気で溺れたのではなくてもいいんです。「今の、危なかったよ」と教えてあげれば、そいつはその日は危ないことはしません。
監視員は身一つで飛び込まない
「溺れてる人の力はめちゃくちゃ強いので相手が子どもといえども巻き込まれる」というのはしつこく教えられます。なので、監視員は飛び込みません。なるべく、プールサイドから手を伸ばすことで済まそうとします。それで届かないと、ロープ付きの浮き輪を投げます。浮き輪が掴めそうにないと分かったら、はじめて、そこまで泳いでいきます。
救助の知識がある人は、必ず浮力補助具を使います。身一つで救いにいくとか、無謀です。泳力があるからって、水をなめたらあかんのです。
簡易救難グッズ
安全に浮くのに必要な補助浮力は体重の10%程度と言われています。これは頭部がだいたい体重の10%弱だから。20kgの子供なら2Lのペットボトル1本で十分、ということです。
事故が起こったのに、何も救難グッズがない!と言う時のために、その場にありそうなものでサクッと作れそうなものを考えてみました。
材料はこれ。ペットボトルと延長コードです。川辺でバーベキューとかしてるなら、たいていペットボトルはありますよね。延長コードは車のトランクにいれとくとアウトドアでは色々便利ですよ。
作り方は、簡単。ガムテープで縛るだけ。これだと2Lが3本なので、60kgぐらいまでの人に対応できます。タップがある側をつけるのがポイントです。おもりが無いと遠くまで飛ばせません。
これを、溺れてる人に向かって投げつけます。本人が自力で掴めるとは限らないので、流れがあるときは、これを下流側に投げて、コードで本人に絡めるようにします。
投げたけどコードが届かなかったらどうするか。そのときは、自分自身の胴体にこれを巻きつけてから飛び込んでください。少なくとも、そのまま飛び込むよりは二次災害の可能性が減ります。
ペットボトルは3本も無くてもいいです。小学生男子なら20kgぐらいでしょうから、1本でもそこそこ助けになると思います。なにしろ、補助浮力具を使わずに、助けに行かないで欲しいのです。
水難事故を無くすために
マスター・キートンみたいに、その場にあるものを利用して救助道具を作らなくてもいいんです。一刻を争いますからそんな暇すらないことも。はじめから、ライフジャケットやアームヘルパーを準備しておくのをおすすめします。ライフジャケット等を着ていれば、溺れても顔だけは出てるので、助かる確率は上がりますし、声も出せるので、大人に危険を告げることが出来ます。
ライフジャケットやアームヘルパーっていくらぐらいするのか?高そうなイメージがありますが、安いものだと1,000円前後です。安いものは規格品ではないので、多少不安では有りますが、裸よりは絶対にマシなはずです。もちろん、余裕がある方はぜひしっかりした規格品をお選び下さい。
子供用の安いもの
こちらは国交省の型式認定品。笛がついてます。
大人も着ましょう。釣りをする人で持ってる人は多いですよね。
アームリングはプールでも違和感ないです。
NHKさんにもお願いしたいことが有ります。毎週のようにこういうニュースがあります。
もちろん、これによって、注意喚起がなされていることとは思います。しかし、ただ伝えるだけではなく、最後に一言「川や海での事故を防ぐ為には、ライフジャケットの着用が有効です」と言って欲しいのです。「事故があってお気の毒でしたね」だけではなく、「防ぐためにこうしましょう」と、ぜひセットで伝えていただければ、注意喚起の効果もあがるるものだと思います。
親がそばで見てるからといって、安全なことは何もありません。人間は、沈むんです。「溺れる前に救う」。お子様のいる方には、ぜひこれを覚えておいて欲しいです。