日本はこれから人口減になっていくにつれて、ソフトウェアや金融などのより高付加価値の産業にシフト行くべきだと思っています。その意味で、ソニーがVAIO事業を売ったのは正しいと思うし、いずれはテレビにも手を付けて、銀行と保険と映画の会社になったらいいと思ってます。
高付加価値産業へのシフトを実現するためには下記の3つの能力を備えた人材を大量に輩出していくことだと思っています。
- 英語
- 最新技術への理解
- ゴールから逆算する力
1については言うまでも無いことです。2については、ITや各種開発技術について。3は、ゴールから組み立てて、道筋を考えられること。これは道筋を考えることは「ロジカルシンキング」と言えますし、ゴールを示すことは「リーダーシップ」とも言えます。ゴールや道筋を仲間に理解してもらうための「プレゼン能力」も内包するので、結構複雑な知識です。
で、このうちの2と3をいっぺんに学習する方法こそが「プログラミング」です。僕が初めてプログラミングに触れたのは、ちょっと遅くて大学生の頃、HyperCardでした。かなり熱中して、ゲームを作ったり、表計算ぽいものを作ったりしました。初めて時給以外の形でお金をもらったのもHyperCardでした。ちなみに、作ったのは「競馬の予想ソフト」でした。
プログラムをやると、いろんなことの「段取り」を考えるようになります。業務の流れる仕組み、といえるかもしれません。自分がやりたいことをイメージして、それに向けてどうやって組み立てていけばいいのか。それを必死に考えて、書いてみて、思った通りに動いた時には、なんともいえない快感がありました。
これからの時代、リーダーを目指す人は、ソフトウェアの開発について、理解をする必要があります。それは工数の見積もりやエンジニアの能力の見極めなんかの理由もありますが、一番の理由は、プログラムを書く勉強をすることで、3の「ゴールから逆算する力」が、目に見える形でつくということです。
じゃあ、どうやったら、そういう人間が日本に増えるか?
一番簡単なのは「そのことに興味を持つ」ということです。そのために素晴らしい解説書が出ました。ユビキタスエンターテイメント社長の清水亮さんが書いた「教養のためのプログラミング」です。
本編はとてもいいプログラミングの教科書なのですが、中に入っているコラムがまた面白いです。コンピュータに関わる人達のストーリーが非常にドラマチックに書かれています。著者は日頃からブログで長い文を書いており、文を書くのがとても上手、というのはあるのですが、それにしても豊富な知識量と見事な表現力です。
この本を本当に読んで欲しいのは中学生です。この本には強烈に中学生を惹きつける匂いを感じます。厨二臭とでもいうべきでしょうか。どうせ、中学生は2chかそのまとめサイトを見て、ニヤニヤムラムラしてる時間が大半です。そんな「リビドーを持て余す」中学生男子・女子にこの本を与えたら、猿のようにプログラミングを始めるに違いありません。それだけのパワーがこの本には有ります。やることの意義も、ストーリーも、方法も、全部書いてあります。
日本には、今、11,035校の中学校があるそうです。各校の図書館に10冊づつを配るとしても、780円の本ですから約8,607万円ほどあれば足ります。それだけで、日本のプログラミング人口が増え、「ゴールから逆算できる能力」を身につけた人間が増えれば、日本の未来は絶対に変わると思います。未来といてもそんな先ではありません。15歳の中学生が10年後には25歳です。プログラマとして大活躍しても全然おかしくありません。
これからの世の中、「プログラミング」を理解している人は絶対に必要なんです。それは、「作業工数」の人材として必要、というだけではなく、プログラミングを修得することによって、効率よく「ゴールから逆算して考える」会話が出来る人が増えることが、大事なんです。まさに、教養として必要なのです。その意味では、中学校の先生にもぜひ読んで欲しいですね。
これは、この本で紹介しているプログラミング環境「MoonBlock」の画面です。すごく簡単に思い通りにキャラクターを動かしたりすることができるようになります。
あくまで入門書ですから、「どうやったらソートが速くできるんだろう」とか「この画像に似た画像を探すにはどうやったらいいんだろう」とかそういうことまではこれ一冊では対応できません。しかし、「思い通りに動いた時の快感」を味わうことなら十分に出来ます。まずはそこが始まりです。