リーン・スタートアップ エリック・リース (著), 伊藤 穣一(MITメディアラボ所長) (解説), 井口 耕二 (翻訳)
【本の要約】
- 新規事業の成功率を高める方法について書かれている。
- 既存の新規事業では、「顧客はこういうものが欲しいはずだから、こういうものを作ろう」と言うやり方をしていた。
- それを周囲に説得し、経過を報告するのにも、大きな労力をかけていた。
- しかし、成功率を高めるためには、「まず顧客の声を聞いてみる」のが一番近道だ。
- 「リーンスタートアップ」の要諦は次の3つである。
1. 「実用最小限の商品」(Most Viable Products)を作りテストする。
2. 「革新会計」によって、それを正確に計測する。
3. 「粘着型・ウィルス型・支出型の成長エンジン」を構築する。 - 「リーンスタートアップ」の方法論は、ベンチャー企業はもちろんだが、大企業・中小企業においても十分に活用が可能である。
- とにかく、みんな「製品」を作ることに集中しすぎてはいないか?「構築」→「計測」→「学び」のサイクルこそが重要だ。そのための「製品」である。(下図は本書から引用)
【感想】
- 長い
とにかく長い。長すぎる。400ページもある。 - 訳者あとがきがいい
逆に訳者さんのあとがきはコンパクトに要点をまとめてくれている。あとがきだけ7回読んだ。 - 「実用最小限の商品」は「商品」でなくていい
これが一番の発見。Dropboxの「実用最小限の商品」は、ソフトウェアでなく、完成したイメージのプロモーションムービーだったらしい。他にも「へー、そういうのでいいんだ」っていうテスト方法が紹介されていた。 - 「革新会計」がわかりにくい
KPI管理、とは違うの? - 普通の企業や政府機関でこれをやるのはやっぱりしんどくないか?
上司にこの長大な本を読ませることにすごく骨が折れると思う。
【最後に】
「キラメックス株式会社」さんという会社がある。数年前、kauponというフラッシュマーケティングのクーポンサイトを始めた。しかし、ある時突然、主たる事業が「IT教育事業」に変わった。クーポンサイトは確かにキツかったと思う。特にトップ2が札束で殴りあうようなことをやりはじめてからはかなりしんどかったはず。で、あるとき、ITの教育教室をちょっとやってみた。意外に好評だった。それで、またミニマムなテストをやり、きっちり検証して、またやって、ということをやってみた。初めは、講師も友達、受講者も友達、だった。でも、いい結果がでたんだろう。そこそこ知名度の上がっていたkauponをすっぱり譲渡し、IT教育事業にピボットした。まさにこの本に書かれているようなピボットを見事にやってのけた。以前から、キラメックスさんの経営戦略はすごいなあと思っていたけど、この本を読んで、一番印象づけられたのはそれかもしれない。