◯enchantMOONが発売になりました
本日(7月7日)正午から、enchantMOONの発売イベントが始まります。僕はこの端末の発売を本当に楽しみにしていて、発売日の4月23日正午前後はスケジュールをブロックして待機しました。Apple製品以外でこんなにワクワクしながら発売を待ちわびたものは久しぶりです。
しかし、僕は明日のイベントには行きません。なんでかというと、手に入らないからです。初日の注文でちょっと遅れを取ってしまい、初回出荷分が手に入らなかったのです。今回、全部で5,000台の注文に対して、初回出荷はわずか4%の200台。4月23日正午の受け付けから50秒以内に申し込んだ人だけが手に入る状態だったそうです。注文フォームで僕が「1台にするか、2台にするか」と悩んでいる間に、負けてしまいました。
ただ、この初日の注文のドタバタが結構波乱を呼んだようで、発売延期や注文のキャンセルといったことに繋がってしまったようです。じゃあ、どうすればよかったのか、完全に後知恵ですが、僕なりに考えてみました。(価格決定プロセスなどについては、発売元のUEI清水社長のブログに詳しく書いてあります。enchantMOONの価格決定プロセス/”新しいコンピュータ”が39,800円である理由)
◯ 初回受付台数を明確に2,000台と決めるべきであった。
製造・出荷が遅れた理由に、工場との間での製造数などが最後まで決まらず、そのあとも想定以上の注文量が入ったことで、ドタバタが加速したようです。初回製造台数を決めて、それ以上の注文を取らないのが普通ですが、「今回買えない人は一生買えない。」という思いから、上限を付けなかったようです。しかし、これは間違いだったのでしょう。コピーにコストがかからないソフトウェア技術者出身の社長だからやってしまったのかもしれません。それで防げなかった遅延もあるし、5,000に増えたから出来たこともあるとは思いますが、やっぱり受け付け上限決めといたらよかったんじゃないかと。
◯ 「発表します。Now In Storeです」とやるべきだった。
Appleがよくやるように、AppleStoreで購入ができるようになるまで、発売を発表しない、という手段です。これは当然、むちゃくちゃ難しいです。今回で言うと、ティザームービーなんかも作ったりして事前に情報をコントロールして出したので、期待が高まり、結果的に注文が殺到したというのがあります。しかし、UEIや清水社長の、IT業界での知名度などを考えたら、「発表即発売」戦略も実は有りだったんじゃないかと思っています。まあ、難しいけどね。
◯ 余分に2ヶ月ぐらいバッファーを取っておくべきだった
これも完全に後知恵なのですが、スケジュール引くときに、バッファーを想定しておくことはある意味当たり前です。ソフトウェアなんかではテスト期間を開発期間と同じぐらい長く取ったりして調整します。逆に季節商品を販売するなど、「売るタイミング」が決まってるものについては、そこをターゲットにして、絶対に間に合うように余裕に余裕を重ねたスケジュールにします。中国と日本の間でモノを動かす、ということを考えて2ヶ月と言わずせめて1ヶ月でも「通関」とかの名目でスケジュール取っといたらよかったんじゃないかと思います。いや、ほんとにタダの後知恵ですが。
◯ 開発者コミュニティを作る
今回、注文した人の大部分は「ガジェットオタク」でしょう。遅延したり、初回に間に合わなかったことでテンションが下がってしまう人も多いと思います。しかし、この商品は開発もできるツールなので、今後のソフト開発なんかも考えると「開発者コミュニティ」を作っておけば、離脱はある程度防げたんじゃないかと思います。iモードが発売されて翌日には勝手サイトができてたように、enchantMOON発売直後に、そのハードの特性を生かしたキレてるソフトが作られてる可能性を上げるには、やはり開発者コミュニティを作って、「テンション」を共有できる状態にしたらよかったのではないかと思います(余談ですが、世界最初のiモード勝手サイトの一つは僕が発売翌日に作りました)。今からでも遅くないと思いますし、ちょうど明日発売イベントもあることなので、そういうコミュニティが出来るといいなと思います。
◯ “精神的”自己免疫疾患
何かの世界で結果を出している人は常に自分に厳しいです。他人に対して「勝つぞ!」と人一倍思っている人は、それ以上の気持ちで「自分に勝つぞ!」と思っています。疲れないのかなあと思うのですが、もうそういうように生まれてしまってるので仕方ありません。自分自身にも高いレベルを要求して、かえってイライラしてしまうことを、僕は” 精神的”自己免疫疾患と呼んでます。自己免疫疾患とは自分自身の細胞を異物と認識してしまって攻撃してしまう病気のことですが、それになぞらえてます。UEI清水社長は、「納期が遅れることが許せない」という考えのようなので、それによって引き起こしてしまってることも多いのでしょう。でもまあ、そうじゃなきゃ結果なんて出ないので、それでいいと思います。
◯でも僕はキャンセルしない。
初回出荷に間に合わなかったことで、多少テンションは下がりましたが、買う気は満々です。むしろキャンセル出てるならもう一台買おうかという勢いです。なぜなら、僕はUEI清水社長のことをよく知ってるからです。彼は天才です。明らかに僕よりも頭が良くて、僕よりも仕事ができて、僕よりも話が面白い彼が、本気で初めて作ったハードウェアが面白くないはずがありません。それに、そんな友達が一から自力でハードウェアを作るなんて、人生の上で、そう何度もあることじゃありません。多分、思想があります。多分、なにか未来があると思います。その多分にワクワクしています。僕の手元に届くにはまだまだ時間がかかりそうですが、テンションを落とさずに楽しみに待ちたいと思います。