遺族にお金を託す方法として、「遺言代用信託」が人気です。
新規引き受け件数を累計で積み上げるとこんな形になります。
遺言代用信託って何?
遺言代用信託とは、自分の死後、そのお金を自分が指定した人が引き出せるようにしている信託です。
被相続人さんが死んだあと、相続人さんは、信託口座から遺産分割協議とは関係なくお金を引き出すことができます。
通常は、遺産分割協議の後でしか、銀行口座からお金を引き出すことができません。
相続人がたくさんいる場合や、相続配分を巡って揉めている場合、なかなか引き出すことができないのです。一方、お葬式代やその他整理など、死亡の直後にお金が必要になることもあります。そういう時に、この「遺言代用信託」が威力を発揮します。
年金みたいな渡し方も可能
もし、あなたが多額の資産を持っている場合、死んだときに子供や孫にいっぺんに お金が入ることで道を間違ってしまうかもしれない、という不安を抱くかもしれません。 そういうときの場合に備えて、毎月いくら、毎年いくら、といった形で渡すことも可能です。
誰かにまとめて渡すことは出来ない
しかし、いくら遺言がないからといって、一人にまとめて渡すことは出来ません。遺留分は無視できないのです。
相続には、遺留分の減殺請求といって、法定相続人なら必ず請求できる権利があります。その割合は相続人によって異なるのですが、図のように相続人が子供しかいない場合、子ども全体で相続財産の半分を主張できます。この図の場合、子ども全体で600万なので、一人あたり、200万円の請求権があります。右の二人は一番左のメガネの彼に200万円は自分の分だ、とそれぞれ主張することができます。
生命保険との違い
相続人に直接お金を渡せる、という意味では、生命保険にも似ています。しかし、 生命保険の場合、(保険料)=(純保険料)+(付加保険料)で出来ています。
保険にもよりますが、たいていの場合、払ったお金(保険料)よりも戻ってくるお金 (純保険料)のほうが少ないです。そうでないと、保険会社は永遠に赤字です。
それに対して、遺産代用信託のいくつかは、信託手数料を無料にしています。なので、500万を残したら、500万(+利息)がそのまま渡したい人に渡せる、というメリットがあるのです。
一方で、相続税については、生命保険では相続税の非課税枠や、遺留分の減殺請求の面でメリットがあります。
一般に、高齢の方が入れる生命保険というのは非常に限られていますので、お年を召された方が、生前のうちに準備をしておこう、という場合、遺言代用信託のほうが使い勝手がいいと思われます。
以前の高金利時代なら、保険の配当が膨らんで、払った金額よりも受け取れる金額の方が多い、ということもあったかと思います。しかし、この低金利時代ではそれは見込めません。銀行に預けていても利息は期待できないですが、逆に「減らさずに確実に渡す」ということにメリットを感じる人もいます。
近年、契約件数が伸びているのは、この「手数料がかからない」ということと、「生命保険の加入が難しい高齢者でも組むことができる」のが理由ではないかな?と思います。