2018年初夏、お台場に新しいアート施設施設 "MORI Building Digital ART MUSEUM: EPSON teamLab Borderless" がオープンします。それに先立ち、館内プレスツアーがあり、許可を頂いたので潜入してきました。約50作品もあるうえに、まだ制作中のものも多いので、ごく一部だけをご紹介します。
- どんな施設か?
- ありえないデカさを『決められた順序無く』歩く
- 階段を上がって上の階へ
- 全体は5つのゾーンに分かれている
- 今回の新作盛りだくさんエリア TeamLab Athletics
- 学ぶ!未来の遊園地
- ランプの森
- En Tea House
- すべての作品がつながっている
- 身体性の認知が脳の発達に。
- 「境界がない(Borderless)』とはどういうことか?
- 注意事項
- オープン日も発表
どんな施設か?
場所はお台場・パレットタウンにあります。観覧車の下、元、「東京レジャーランド」というゲームセンター&ボーリング場があったところです。
10,000㎡の広さの空間に壁や鏡を張り巡らせ
470台のプロジェクターを設置し、
520台のPCでデジタルアートをリアルタイムに演算して展示する、すごいスケールの展示です。
過去に東京では、お台場のteamLab Planetsやヒカリエでの展示があったわけですが、いずれも一時的な施設でした。今回は、それを大幅に超える規模で、常設の展示となります。プロデュースは森ビルさんです。
ありえないデカさを『決められた順序無く』歩く
入口に入って、いきなり3方向に別れます。普通の美術館と違って、決められた順路というのはありません。
最初の部屋に入ると、体に蛹がまとわりつき、そこから蝶が生まれるそうです。
最初の部屋はまだ制作中でした。
その蝶が、花の咲く空間を飛び回ります。
この花の森が迷路になっています。
で、この森にはいろんな季節の花が咲いています。あじさい(梅雨)やひまわり(夏)など。
これらの花はかならず同じ場所に咲くのではありません。
人が立ち止まると成長して咲き、歩くと散らされて散る、というインタラクティブなもの。
その迷路の中には小部屋があるのですが、小部屋の中にはまた作品が。
そして、小部屋から出てくると、回りの草花が変化しています。
これは迷う。(迷った)
森の奥には巨大な滝のある空間があります。
これは、チームラボ得意の物理シミュレーションによって水流を再現した滝。一瞬として同じ瞬間はありません。この滝も何度かみたことありますが、こんなでかいのは初めて見た。
階段を上がって上の階へ
階段を上がって、上の階へ行きます。
階段の側面にも、アートが。これは、お客さんが上の階で書いた絵がそのまま投影されます。さらに、その花々は散っていくときに、花びらの軌跡によって、花自身も新たに線を描き残していきます。と、文字にすると、なんだかよくわからないかもしれませんが、同じ瞬間が二度と無いというのはとても儚くて、綺麗です。
全体は5つのゾーンに分かれている
全体としては5つのゾーンに分かれています。
・Borderless World
・TeamLab Athletics
・学ぶ!未来の遊園地
・ランプの森
・En Tea House
今回の新作盛りだくさんエリア TeamLab Athletics
ポヨンポヨン宇宙
Boing Boing Universe: Experimentation / ポヨンポヨン宇宙:実験中
人がいると、そこの重力が大きくなり、星くずが集まってきます。やがて恒星になったり、超新星爆発をしたり、ブラックホールになったりするそうです。
グラフィティネイチャー 山山と深い谷
凸凹の激しい空間(高低差3メートルらしい)に、インタラクティブなアートが投影されます。めっちゃ楽しそう。
ちなみに、上は完成予想図。つまり、まだできていません。
現在はこんな感じ。
制作中のところを見せてくれました。こんなふうにテストパターンを表示して作ってるんだ。
色取る鳥の群れの空中吊り棒渡り
Aerial Climbing through a Flock of Colored Birds: Experimentation / 色取る鳥の群れの空中吊り棒渡り:実験中
吊橋が無数に絡み合ってつながっており、誰かが進むことでその揺れが他の人にも伝わり、予測不可能な揺れをする、というものだそうです。
こちらも実際には制作中。
光の立体ボルダリング
Three dimensional Light Bouldering Experimentation / 光の立体ボルダリング:実験中
空間内にあるたくさんのバーには、光の玉がついています。ここで光のバッヂが配られるのですが、それと同じ色に光っている玉を掴んで移動します。もちろん違う色の玉を掴んでもOK。光の色は常に変化するので、同じルートで通るものはない、ということ。
すっごい楽しそう!
こちらも制作中です。頑張って!
学ぶ!未来の遊園地
Sketch Aquarium
これは、何度も展示をされているおなじみの作品。子どもたちが書いた絵が、そのままプロジェクターに投射されて、水槽の中を泳ぐ、というものです。
裏返った世界の、つながる!巨大ブロックの街
駅のブロックを2つ、離れた位置に置くとそこを結ぶように線路が描かれ、列車が通ります。ヘリポートのブロックを置くと、ヘリコプターがやってきます。
ランプの森
Forest of Resonating Lamps - One Stroke
無数のランプがぶら下がっており、人との距離に応じて、光り方や色が変わります。
中に入ると、とにかく幻想的。宇宙の中にいるような気分になります。
En Tea House
この施設内で唯一の喫茶スペース
お茶が出てくると
その中に花が咲き、
飲むと
消える。
という、「アートを飲む」体験ができます。
すべての作品がつながっている
約50もの作品が展示されているのですが、作品は部屋から出て移動しはじめ、他の部屋に行きます。で、作品同士は移動中、すれ違ったり、触れるとリアクションしたりしています。
これは象が歩いてくるところと、踊りを踊るうさぎやおじさんがすれ違っている所。
それぞれの作品が互いにコミュニケーションを取り「次、こっちの部屋が空きそうだよ」「じゃ、私行きます」といった具合に、空間の中を常に移動しているので、一瞬として同じ瞬間はないし、スタッフ側でも次の瞬間、どこになにがいるのかよくわからないということになってるそうです。なんかすごい。
身体性の認知が脳の発達に。
脳における「海馬」が空間認識能力に関わってるらしいのですが、マウスの実験によると、広く凸凹なところで育てたマウスでは、そうでないマウスに比べて脳の神経細胞が4万倍、海馬のサイズも15%増加していたそうです。海馬は記憶にも大きく関係があります。人間の教育はだんだん身体性を失ってきているので、あえて凸凹なところや、バランスの悪いところにいって、身体性を取り戻すことがとても重要になっている、とか。
ポヨンポヨン宇宙や、その他のインスタレーションは、身体性を強く意識させる作品でした。
【参考になりそうな論文1】刺激の少ない環境が成体期マウスの空間認知や海馬におけるGAP-43およびシナプトフィジンの発現に及ぼす影響 (宮本 満, 杉岡 幸三, 荒川 高光, 三木 明徳)【参考になりそうな論文2】
「境界がない(Borderless)』とはどういうことか?
これまで世界中で作品を発表し、その都度高い評価を得てきたteamLab。さらに現在は、常設展示も持っています。本拠地である東京に、これまでにない最大規模の常設施設を作るということで、ここでしか見れない作品を展示。力の入りようが違うなと感じました。
なかでも、違いを感じたのがBorderlessというテーマについて。
これまでの作品においても、
2次元と3次元の融合
自我と空間の融合
Floating in the Falling Universe of Flowers
など様々な作品でBorderlessを表現してきましたが、今回のteamLab Borderlessでは、それをすべてつなげてきた感じです。
・作品と作品の枠を取り払う
普通、美術館で見る絵は枠の中に入っています。
並べられた2つの絵の間に関係を見出し、相互に作用させようとするのは、見ているものの頭の中だけであり、それはハイコンテクストな世界、オタクの世界と言ってもいいかも知れません。
今回の展示では、額縁に関係なく、それぞれの作品の間を、別の作品が飛び回ります。
・重力からの自由
いくつかの作品では、極めて高い没入感があるものがあります。平衡感覚や、自分の座標感覚を見失うように設計されています。
VR技術は、ゴーグルを付けた地点をゼロとして、どのように重力や座標を表現するか、を追求してきましたが、そのまるで反対です。ゴーグル無しで、すごい没入感。人間の脳って、都合よく騙されるものだな、と思います。
こういう体験をさせることをチームラボではBody Immersiveと呼んでいるそうです。
このBody Immersiveを、既存のVRと比較してみるとこんな感じ。
・外と内の境界を取り払う
作品の中には、鏡が使われている作品があります。平衡感覚も座標感覚も失って、光の渦の中で作品の中を気持ちよく彷徨っていると、突然自分の姿が目の前に出てきて驚くことがあります。その瞬間、いま自分の意識が体の外と中の曖昧な領域にあったことに気づきます。
他にも、巨大な波がひたすら生成される部屋があるんですが、そこにいると、時間も自分自身も何もかも良くわからなくなります。禅の境地にも似た、中と外がつながっている感じがします。
普段の生活において、人は、自分が枠に囚われているのは当然で、境界があることを前提としながら生きています。
この施設は、自分が枠に囚われていることに気付かされる、という意味で、単なるデジタルコンテンツではなく、アート作品なんだ、と思います。
注意事項
この夏、行こうという人のためにいくつか注意事項を
・物が落ちる服を着ない
中はめちゃくちゃ広いです。しかも、ほとんどが暗めの空間です。物を落としたら拾うのが絶対に大変。持ち物は預けるとしても、ポケットにものを入れないか、入れたとしても絶対に落ちないようにしたほうがいいです。
・なるべく平たい靴で
段差が多い箇所もあり、また、場内かなり広いので、相当歩きます。ヒールはやめたほうがいいです。(平たい靴も貸してくれるみたいです)
・子どもを見失わない
暗いし、順路が無く大人でも中で迷ってしまううえに、アート作品は常に動いていて、同じ瞬間がありません。興味深い何かを見つけて追いかけてしまうと、たちまちはぐれてしまいます。絶対に見失わないように常に襟首を掴んでおくか、諦めて、iPhoneをもたせて、はぐれたら「iPhoneを探す」とか?
オープン日も発表
今回のプレスツアーではこれまで「2018年初夏」としてきた、オープン日が発表されました!
森ビル 杉山央さん
『都市にはヒト・モノ・カネ・情報が集まります。私たちは「都市の磁力」と呼んでいます。これを高めるためには、芸術や文化の進行が必要と考えています。森ビルはアークヒルズのサントリーホールや、六本木ヒルズに森美術館を開くなどして、東京の魅力を高めることをしてきました。
チームは3年ほど前に発足しました。これまでの既存の枠を超えて、全く新しい施設づくりができたと思っています。2020年の東京オリンピックに向けて、ここが新たなdestinationとして、世界中の人々をひきつけ、ここから新しい文化・芸術・アートを発信していけると信じています。』
teamLab 猪子寿之さん
『ベースがある東京で、10年後、20年後、30年後を振り返った時に、世界からみてエポックメイキングになるようなそういう場所を作りたいと思っていました。
境界のないアート群からできています。自らの身体で探索し、時にはさまよい、あるものを発見していく場所。新しい発見を共に作っていくようなそういう場所になったらいいなと思っています。アートそのものが動き出し、部屋から出て、他のアートたちと自らコミュニケーションを取り、場合によっては混ざり合っていく。境界のない一つの世界になっています。プロジェクター群によって包みこまれていく空間が、美術館に限らず、いろんな空間の有り様を変えていくと思っています。この空間が最終的にどんなのものになっていくのか、それは僕にもよくわかりません。アート群によって他の人との関係を連続的なものにし、世界と自分との境界をなくしていく、そういう世界で、いろいろなものを見つけて欲しいと思います。』
オープンは2018年6月21日!
チケットの発売は2018年5月下旬とのことらしい。
超楽しみ。