地震学者で防災の研究もされている慶応大学SFC准教授大木聖子先生に地震の話をお伺いしました。話としては地震の予知や防災などについてで、かなり色々なことをお伺いできたのですが、そのうちの一つで一番印象に残っているのが「強い揺れが1分続いたら、警報を待たずに津波が来ると思って逃げよう」ということです。
理屈としてはこういうことです。
- マグニチュードによって、震源域の広さが変わる。
- 震源域が広がるスピードは常に一定。(3km/秒)
- だから、マグニチュードが大きい地震ほど、強い揺れが長く続く
- 巨大地震の目安としては、強い揺れが1分間つづくこと
順番に説明したいと思います。
通常、地震が起こった時に「震源はどこだろう?」と、気になりがちですが、実は、一番強く揺れているのは、「震源域」と言われる断層が壊れた場所だそうです。「震源」はその中の、「壊れ始めた場所」に過ぎません。
震源で地震が発生した時、それが乗っている断層が走るように壊れていきます。
地盤とは岩ですから、壊れ始めた点から断層に沿ってヒビ割れが広がっていきます。そのスピードは1秒に3km。時速に直すと約1万km/hというものすごいスピードで広がって行くのです。地盤という巨大なガラスが割れていくような感じですね。
で、マグニチュードが大きくなると、壊れるエネルギーが大きくなります。巨大地震の場合、震度は7が最大なので、震度は同じですが、震源域が広くなります。つまり、マグニチュードが大きいほど、強く揺れる場所も増える。ということです。
阪神淡路大震災、関東大震災、東日本大震災、それぞれの場合の、主たる地震の震源域を並べるとこんな感じです。東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)の震源域の大きさに愕然としますね。
さて、割れるスピードが同じで、割れる範囲が広い、ということは、(時間)=(距離)÷(速さ)なので、壊れるのに掛かる時間も長くなります。結果、強い揺れを感じる時間も長くなります。
「大きいほど長い」って、何を当たり前のこと言ってるんだ、という感じですが、ポイントは、「震源地や震度がわからなくても、強烈な揺れの時間で震源域の広さがそこそのわかる」ということです。じゃあ、どのぐらい続くとヤバいのか。阪神淡路大震災で15秒、関東大震災で約1分、東日本大震災で約3分、です。震源からの距離や地形などによっても変わりますが、もし、立っていられないほどの強い揺れを1分感じたら、関東大震災クラスの地震が近くで起こっている可能性があります。もちろん、15秒だろうが30秒だろうが強烈な揺れは危険です。でも、1分続いたらもうかなりの巨大地震です。津波警報とか待つ必要はありません。揺れが落ち着いたら津波から避難できるところに移りましょう。 と、いうことなのです。
「大きな地震ほど長く揺れる」というのは感覚的にはわかりますが、実際にこういうメカニズムで時間が長くなるのは知りませんでした。地震の継続する時間は震源からの距離とかP波、S波によって違う、みたいな風に思ってました。これからは、揺れた時にどのぐらい長く揺れたか、しっかり意識するようにしたいと思います。
ちなみに、海から遠いと言って、津波が来ないとは限りません。川をめちゃくちゃさかのぼります。関東平野の場合、かなりさかのぼります。
これは2メートル水位が上がった場合の想定地図です。 より広いちいきはここから見ることができます。※当初9メートルで掲出していましたが、東京湾に来るのは歴史上の最大で2.5m、大きく見積もって3メートルということで修正しました。
地震は怖いです。でも、もっと怖いのは、怖いからといってそれに対してなんの対策もしないことです。強い地震があったときに、何が起こるのか。想定外の事態になったときに、自分がどう反応して動けるか。普段から考えておくことが大切なんだなあと思いました。
大木先生は優秀で使命感にあふれる方なのですが、話がとても分かりやすくて為になりました。こういうことを教育の現場に入れていかないとダメだよなあ。