それ、僕が図解します。

世の中のビジネスモデルやいろんなものの複雑な仕組みを、できるだけわかりやすく説明してみたいと思います。主な話題はネットビジネス、不動産、オタクネタ、時事ネタなど。中途半端な説明や、図を使ってないものもあるかもしれませんが、温かい気持ちでお許しください。

漱石は「月が綺麗ですね」と言った。【書評】「ITビジネスの原理」尾原和啓著

 僕が自分のブログのタイトルを「図解します」にしたのは、僕が図解が得意だから、というわけではなく、僕自身が考えを整理するときに、必ず「図」にするように習慣づけてるからです。筆記用具などのツールもそれを前提に揃えています。なぜ「図」にするのかというと、頭のなかに入っている状態は、多分「文字」ではなく「イメージ」で入ってるからだと信じているからです。

 

 僕は子供の頃から本が好きで、純文学、推理小説、海外作品、古典、和歌までほんとになんでも読んで、読む以上に書くことはもっと好きで、言葉に対する感覚は磨き続けて行きたいと思っていますが、それでも、考えをまとめるときには言葉よりも図の方が分かりやすいです。

 

 言葉は便利だけど、万能のツールじゃない。言葉だけで世界を表現することは出来ない。まさに「百聞は一見に如かず」。

 

 ただ、インターネットって、結構言葉で構成されてる部分が大きいです。昔のパソコン通信もそうだし、電子メール、2chツイッターも文字ばっかりだし(ASCIIアートはあるけど)、ニコニコなんて映像サービスなのに文字載せてるし。文字だけだと伝わらないから、Facebookは写真がバンバン投稿される感じになってたりするんだろうなと思います。

 

 そういえば、この話も、文字のことなんだけど、文字だけじゃないよね、という話だった。

ジブリ鈴木敏夫と糸井さんのFAXやり取りに見る「なんか大切そうなもの」 « ツブゾロッタフィルム tsubuzorotta film

 

 で、インターネットで、どうやって、ニュアンスとか、前提知識を元にした、より密着感のあるコミュニケーション、いわゆる「ハイコンテクスト」な表現をやっていくのか、というのは、これからとてもおもしろい話題です。みんながネットに繋がって、情報をやりとりすることが当たり前になってきて、「行間」がどんどん増えてきた。空気を読むのが上手い日本人は、これからどんな風になっていくんだろう、というのは普通に興味深い話です。I love youを『月が綺麗ですね』と訳すような、そういう高度なコミュニケーションが誰にでもできるようになる日はこないものでしょうか?

 

 先輩の尾原さんが本を書かれたというので、早速買って読みました。「インターネットの原理」というだけあって、1章から3章までは、インターネットビジネスの仕組みを解説しています。真髄というかエッセンスの部分をきちんと網羅して丁寧に説明しようという試み。

 

 ざっくり言うと、この、ビジネスモデル解説の1〜3章は読まなくていいです。自明なことが多いから。これから起業を目指している大学生とかは参考になるかもしれませんが、特に図解されていてわかりやすいわけでもなく、読んでいてしびれがきれるかもしれません。またインターネット業界でない人にとっては、数字が出てるわけではないので(ビジネスの説明するなら図はなくても数字は必要だろう!)、やはりあんまり自分のビジネスの参考にはなりません。

 

 この本の読むべき箇所は5章と、5章の前ふりをしている4章。逆に、インターネット業界にいる人は、今すぐ買って、この4章、5章を読むべきです。マストです。

 

 著者は、インターネットは第2のカーブを曲がっている途中、と言っています。勝手に図解するとこんな感じ。

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 インフラが出来上がり、プラットフォームとして成立してきたインターネット。高度なネット社会は、やがて参加者の自己実現であり、みんなが幸せになることにつながっていく、と筆者は説きます。それはまさにほんとにその通りだなあと共感します。そのことを、筆者は「ハイコンテクスト」であったり、「非言語」というキーワードで、読者に伝えようとしています。

 非言語なものを言語で説明しているので、なかなかもどかしいところも正直あるのですが、筆者が真摯に伝えようとしているので、必ず何かが伝わるはず。夢の実現に向けて、環境は出来た。やるのは誰だ?この本を読んで、「オレがやるんだ!」って思う人が多くでてきたら、多分尾原さんが書いたこの本の目的は達成されるんじゃないでしょうか。

 

 で、この筆者の尾原さんは、僕にとっては大先輩なのですが、何の先輩か?と言われるとよくわかりません。とりあえずウザい先輩です。大学の先輩だし、僕がモバイルやってる時はドコモにいるし、僕の古巣のリクルートには2回も入るし、Klabにもいるし、かと思えばGoogleみたいな大企業(IT業界の人間からするとGoogleの存在を感じない日は無いのでほんとにウザい)にいるしで、常に気になるポジションにいます。Appleに行ってくれてなくてほんとに良かったです。

 

 この本でもウザさは全開で、あとがきには、「最初にあとがき見るな」的なことが書いてあるし、もうちょっと簡単に言えばいいのにそんな持って回った言い方しなくても、と思うところもあるのですが、ウザいぐらいのコミュニケーションっていうのは実は「親切」の裏返しだったりします。全体に例示が多くて読みやすく、まあ、ウザいぐらいに親切です。とにかく、大事なのは4章、5章なので、ビシッとkobokindleで買って、休日にでも読んでみてはいかがかなと、思うわけです。